ベン・ハー

ベン・ハー」、チャールトン・ヘストン主演、ウィリアム・ワイラー監督、アメリカ、1959

これももう10回くらい見ているんじゃないかと思うが、やっているとついつい見てしまうんですねー。改めて気がついたことがいろいろあるが、最初に「序曲」がかかってから、タイトルの音楽がはじまるまで13分近くかかっているのだ。いくら3時間40分以上の大作とはいえ、今だったらこんな悠長なつくりはぜったいムリ。まあオペラの感覚で作っているからこうなるんだろうけど、昔の人は辛抱強かったんですね。
美術とか、細かいところも気合がはいっている。ガレー船の櫓をこぐペースを指示するおじさんが槌をたたく台は、槌でくりかえし叩かれた痕がへこんでいて、いかにも使い込まれた感じ。歴戦の船だということがさりげなく示されている。
メッサラが戦車競争の後で体中ずたずたになって「ベン・ハーを呼べ!」といっている場面で、医者が「早く手術しないと命がない」とせかす。この時代に手術なんてやってるのかと思いきや、メッサラの手を縛り付けている。麻酔はなしで切っちゃうのだ。メッサラは手術を怖がるキャラクターじゃないけど、そりゃ死んだほうがましだと思うかもしれない。
ジュダ・ベン・ハーは、ユダヤ人というよりは狂信的なナショナリストという感じ。イエスの救いを見るまではあまり宗教的に敬虔な感じは受けない。まあ現代になってから作られた映画だからこんなもんでしょう。昔見たときには、クインタス・アリアスの養子にまでなりながら、やたらローマに対して攻撃的なベン・ハーの態度が理解できなかった。
それにしてもやっぱりかっこいいのはローマ。メッサラもアリアスもピラトも皇帝も、映画に出てくるローマ人はみなかっこいい。威厳と自信に満ちていて知恵もある。いかにも帝国の支配者。アメリカ人はこういうのにあこがれているところが絶対あるだろう。現実そうなっているかどうかはともかくだが・・・。