不都合な真実

不都合な真実」、アル・ゴア主演、デイビス・グッゲンハイム監督、アメリカ、2006

地球温暖化問題のキャンペーン映画。「映画でノーベル賞?」と思っていたが、かなりよくできている。ゴアの講演会にいろんなビデオを足して、編集しているのだが、この講演会の構成がたくみ。ビジュアルのプレゼンテーションに工夫がしてあり、ゴアのナレーションもうまい。環境問題、しかも議論のある問題では科学論争に踏み込みがちになるが、そうした論争は避け(もっとも論敵に対する攻撃をいろいろはさむことは忘れていない)、氷河の後退や旱魃、洪水といった見てわかるような映像で見る側を説得しようとしている。ところどころにゴアのこれまでの経歴に関するエピソードがはさみこまれているが、宣伝臭はあまり感じられず、むしろゴアに対する好感度を高めるような効果を出している。最後は、温暖化問題に関する悲観論や無力感に対抗するような政治的行動を促すメッセージで締めているが、ここも見る側を元気にさせるような内容。マイケル・ムーアの映画みたいな、おもしろいが反感を買うようなやり方はとらず、上手に自説の方に人を引き込む方法はうまい。全体としてPRの王道をいくような映画。