明治大帝と乃木将軍

「明治大帝と乃木将軍」、嵐寛寿郎、林寛主演、小森白監督、新東宝、1959

東宝明治天皇もの」の三作目。出がらし感もあり、客の入りはよくなかったらしいが、今見るといくつか興味深いことに気づく。とにかく乃木将軍は、明治天皇に申し訳ない、戦死した兵に申し訳ない、遺族に申し訳ない、という自責の念の塊みたいな人格にされている。そのわりに乃木が旅順攻略戦で何をしたかということはさっぱり描かれていない。息子を亡くしたとか、東京で乃木を交替させろという意見が出たときに天皇が止めたとか、そういう話ばかり。で、戦争が終わり学習院長になった乃木が人力車に乗っていると、老車夫が203高地戦の遺族で乃木の悪口をいっている。乃木は名前は隠して車夫の家に行って線香をあげ、目の不自由な遺児のために二十円を恵む。車夫は客が乃木だったとしって後悔して後を追いかけるというエピソード。逆にいえば、これくらいしないと乃木は持ち上げてもらえない。
ラカン明治天皇はいつもどおりだが、さすがに崩御の場面では画面に出てこない。間接的な映像で示されるだけ。これ、昭和天皇崩御の場面を映画で・・・というのは今でもムリなんだろうなあ。