博士の愛した数式

博士の愛した数式」、寺尾聰深津絵里主演、小泉尭史監督、「博士の愛した数式」製作委員会、2006

だいたい原作に忠実なストーリーだが、成人して数学教師になったルートが思い出として博士のことを語る、というつくりはちょっとどうか。吉岡秀隆(成人したルート)があまりうまいとは思えないし。
基本的には「メメント」なんかと同じ設定、つまり短期記憶がごく短時間しか保持できない病気の人の話なのだが、そうすると、博士は会うたびに家政婦のことを初対面だと考えることにならないのだろうか。ルートのことはいつも忘れているのに、家政婦のことは覚えているのは、それなりの説明がないとちょっと奇異に感じる。
しかし映画の出来はよい。寺尾聰深津絵里が上手いし、浅丘ルリ子が寺尾の義姉役で、これもぴったりはまっている。奇をてらったところのない感じで、家政婦親子と博士の関係のあたたかさが見る側にも伝わってくる。浅丘ルリ子の家政婦への感情の変化もよい意味でのアクセントになっている。