新兵隊やくざ 火線

「新兵隊やくざ 火線」、勝新太郎田村高廣主演、増村保造監督、東宝、1972

兵隊やくざものも、これで最終作。はじめてカラーになった。増村保造が監督して脚本も書いているので、ちょっと期待して見たのだが・・・。
作曲家が変わり、変なエレクトーンの演奏で映画がはじまり、かなり面食らう。ストーリーは前作までの話とは切れていて、昭和19年北支戦線の話ということになっている。今回の悪役は宍戸錠で、とにかく中国人はバンバン殺そうとするし、女は襲うし、戦闘のドサクサにまぎれて上官は殺す、と悪事のしほうだい。八路軍のスパイ役で安田道代が出てきて、大宮は命令で安田道代をたらしこみ、秘密を聞き出そうとするが、大宮自身も安田道代にホレてしまう。それはいいのだが、安田道代から八路軍に入るように勧められたりする(まあ結局上等兵殿をおいかけて戻ってくるのだが)。八路軍は完全に善玉で、日本軍は(主役二人と小隊長を除けば)悪玉になっている。これは公開当時見た人たちもかなり面食らったのではないか。安田道代は、以前に登場したうぶな娘役から、かなり女っぽくなった。しかし、大宮にホレると秘密を全部べらべらしゃべってしまうのはどうか。ちょっと甘すぎないか。最後のところも、大宮、有田の二人は軍から離脱して戻ってこないような結末になっている。どうも後味が悪い。
自分の肉体を宍戸錠に提供して大宮と有田を救う安田道代を大宮がいったん袖にしておきながら、やっぱり思い直して告白すると、いつのまにか安田道代が有田上等兵になっていた、というのはちょっと・・・。
あと、勝新太郎がバンバン歌を歌っている。ご愛嬌といえばそうなのだが、これもちょっと違和感をぬぐえない(特に「戦争なんか大嫌い」という歌詞)。軍隊の規律には従わないが、なんだかんだで軍隊からは離れないというシリーズの基本線がかなり破られていて、ついていけない感じがする。