めがね

「めがね」小林聡美もたいまさこ主演、荻上直子監督、めがね商会、2007

今日はこの映画ではなくて別の映画にいくはずだったのだが、上映日程をかんちがいしてこっちを見てしまった。これは当分やってるから今日見なくてもよかったのに…。
映画は非常によい。南の島の小さい宿屋に小林聡美ほか何人かの人々がやってくるが、そこですることといえば、たそがれることだけ。小林聡美は最初はわけがわからないので頭にきて出て行くが、結局また戻ってきて、いつのまにか自分もただたそがれているのでした、という話。
全編になんともいえない雰囲気があって、エンドロールで流れる大貫妙子の歌までそれで統一されている。脚本がよく練られていることもあると思うが、それだけではなくて、出演者の雰囲気(もはや「演技」ではないような感じ)、セット、ロケ地の風景などがみなあるべきところにおさまっている。台詞は少なく、登場人物はみな敬語をつかう。それがまた映画と客の間に適度な距離をおかせて客を映画に溶け込みやすくさせている。時間の流れがとてもゆっくりしていて、映画の最中、自分は一度しか時計を見なかった(いつもはしょっちゅう時計を見ているのだが)。
荻上直子は、「かもめ食堂」から、またひとつ新境地を開いた感じ。それから映画に出てくる料理はみなとてもおいしそうだ。
終わりのほうで気がついたのだが、車のナンバーから地名が消されている。エンドロールを見るとロケ地が与論島だということがわかるのだが、映画の中には実在の場所を示すようなものは一切出てこない。ありそうでなさそうな場所というのもいいと思う。