「在日」論の嘘

浅川晃弘『「在日」論の嘘』、PHP研究所、2006

「在日」(もちろん朝鮮人のことだが)についての議論を取り上げてかなり厳しく批判する本。俎上におかれているのは、姜尚中朴一辛淑玉井筒和幸テッサ・モーリス=スズキ、鄭香均(東京都保健師管理職訴訟の原告)、大沼保昭
この中ではテッサ・モーリス=スズキ大沼保昭を批判した章が勉強になった。スズキは、資料を恣意的に解釈して都合よく結論を作り出す困った人だが、もっと多くの人がそのことを指摘してもよいはずである。ただ、日本政府の北朝鮮帰国事業への関与については、誰かが他の資料を基にしてより根拠の確実な見解を出すべきだと思う。大沼保昭については、個人がどうのこうのというより朝鮮人からの「一方的な国籍剥奪」とされていることが実はそのような単純なものではないことをきちんと説明しているところが貴重である。井筒とか、朴とかは、まあどうでもいいような類の人々だが、メディアへの露出が高い人にきちんと批判をしておくことには意味はあるだろう。
著者は自身、元韓国籍をもち、在日朝鮮人問題について研究書を書いて学位を取っている人なので、議論の進め方はおおよそ外していない。ただ、「プロ市民」というような言葉はあまり使わないほうがいいような気はするし、「原告人」といった表記はちゃんと校正で直したほうがよい。