右翼・ナショナリズム伝説

松本健一『右翼・ナショナリズム伝説』、河出書房新社、1995

松本健一が右翼と自分のかかわりから問題を拾い出して書いたエッセイ。分析的なところもあり、感傷的なところもあり、いろんな意味で味がある。また、右翼が直面していた(現在も突き当たっている)問題はきちんと押さえられている。
右翼は、錦旗と日の丸の間の距離をどう見ているのか、民主制にべったりとくっついてしまった天皇にどう対するのか、これからも「肉体言語」=テロを振り回すことを続けるのか、いずれも右翼がまだ整理をつけられていない問題ばかりである。それにしても著者のようなテーマを扱う文筆家は、右翼の脅迫と正面から向き合わなければならず、しかも右翼関係のタブーがグズグズになるはるか前から、それをしなければならなかったことは、軽く見られていいことではない。右翼が命がけなのと同じくらい、右翼についてものを書くことも命がけでなければならなかったのである。