日本政治の対立軸

大嶽秀夫『日本政治の対立軸』、中公新書、1999

90年代の日本政治を、政党間の対立軸という視点から分析した本。選挙制度改革がすぐには政党間の明確な対立軸をつくれなかったこと(現在も半ばはそうなっている)の理由を分析している点は重要。その点、中井歩の民主党についての論稿も重要。
しかし、90年代の経済社会の変化がネオ・リベラリズム改革に抵抗し続けたままで終わったという著者の評価はどうか。確かに他の先進国に比べて対応が遅れたことは否定できないものの、90年代の不況を通じて、政治はともかく企業は確実に競争的体質の強化を実現していたのである。その点を過度に軽視する著者の視点は批判を免れない。
一方、橋本行革が橋本個人の「弱者保護」への強い執着から、ネオリベラリズムへの一貫性を欠いたものになったという指摘は重要だが、やはり再検討の余地があると思う。小泉改革を準備したのは橋本改革にほかならない。99年の時点ではそのことに踏み込んだ判断を求めることには無理があるが、橋本改革と小泉改革の連続性の問題は現在ではより積極的な評価が必要だろう。