日本の戦争力VS.北朝鮮、中国

小川和久、坂本衛『日本の戦争力VS.北朝鮮、中国』、アスコム、2007

タイトルからは北朝鮮、中国の軍事力に焦点があたっているように読めるが、それはこの本の記述の約半分ほどで、後の半分は日本の安全保障の構想、危機管理への組織的対応策といった問題にあてられている。また、どちらかといえばそちらの記述の方が価値が高いと思う。
北朝鮮に対する記述については、著者は北朝鮮の体制が永続する可能性およびそのコストに対して真剣な検討を欠いているように思える。北朝鮮の急速な崩壊が望ましくない事態を招く可能性があるからといって、「だから北朝鮮の存続を支えるべきだ」という結論にはつながらない。
著者自身が、国家安全保障会議設置についての有識者会議のメンバーなので、それについてのエピソードもいくつか書かれている。またアメリカでの重要インフラの防護や危険分散についてページが割かれており、その部分が参考になる。著者の意図は情報の提供というより、読者の安全保障に対する考え方を変えることにあるようだ。国民皆兵制をあえて提案しているところなどにその片鱗がうかがえるが、できるならば、著者とは全く立場の違う人間との対談を出版するほうが、より論点がはっきりするのではないかと思う。