さびしいまる、くるしいまる

中村うさぎ『さびしいまる、くるしいまる』、角川文庫、2006

中村うさぎは雑誌で読んだことはあったような気がするが、本として読むのははじめて。いままで人にすすめられたこともあったのだが、ブランド物の買い物狂ということだったので、ブランド物にあまり感心のないわたしはパスしてた。今回の本はホストに入れあげた自分の体験についてのエッセイ。ホストクラブにも行ってみようとは思わないのだけど、先々週あたりの朝日の書評欄(軽い本をとりあげる3枚目の欄)でとりあげられていて、その評がひっかかっていたので買ってきた。

いや、最近読んだ本でこんなに胸を衝かれた本はなかった。ひさびさにちょっと涙を流してしまいました。自分はホストに入れあげることはないだろうし、浪費癖はあまりないし、借金はしない主義だけど、著者の自分自身をめちゃめちゃにして入れあげてしまう気持ちにはとても通じるものを感じる。

本の最後に文庫化の時に付け加えられたあとがきがあり、ホストと手切れをすることになった事情と後日譚がある。著者はいまホストとのことをどういう気持ちで思い返しているのだろうか。著者にとって過去を美化するにはあまりに生々しい話だが、気持ちのどこかで入れあげていた自分の気持ちの切なさにどこか離れがたいものを感じているように思う。