日本のインテリジェンス機関

大森義夫『日本のインテリジェンス機関』、文春新書、2005

著者は元内閣情報調査室長。内容は、情報活動に関わった著者の回顧と反省、それをもとにした日本の情報活動に対する提言、といったもの。

この類の本としてはとてもおもしろく読めた。というのはこういう機微に触れるような立場の人の回顧録では肝心なことが書けないのと、現役時代の自慢話に終始することがままあるので。しかし、この人はとてもまじめな性格の人らしく、自分の失敗や不足（まあ自慢話も一部入っているけど）から日本の情報活動に何が必要かを分析して、読者を啓蒙しようという意図がうかがわれる。

特に自分としては、公安警察や内調が何をやらないか、何をできないか、それはどうしてか、といったことについての記述がとてもためになった。官僚機構の中での内調の位置づけや他の機関との関係についても勉強になった。また、著者には今後の日本の情報活動を改善したいという強い希望があるので、いいっぱなしの批判だけでなく建設的な提案が多く書かれているところもよし。新書サイズなので早読みできるところもなおよし。