諜報機関に騙されるな!

野田敬生諜報機関に騙されるな!』、ちくま新書、2006

著者は公安調査庁にいた人物で、諜報関係の問題については理論と実務の両方に精通しているから、この本も非常に内容の濃いものになっている。アメリカのイラク侵攻前の大量破壊兵器についての諜報活動、アルカイダ問題、中国、ロシアの諜報活動、北朝鮮に対する諜報活動、諜報機関に対する監察というそれぞれの章の末尾の注釈を見ても、ふつうの学術論文並みの細かいつけ方で、著者が執筆に割いたエネルギーが伺われる。アメリカの諜報活動の問題点を指摘する章がとくに説得力に富む。諜報機関に莫大な金と労力を注ぎ込んでも、諜報活動の方針が間違っていれば結果もまたろくでもない。経験ある組織にとっても、課題は残されたままである。