ブラックブック

「ブラックブック」、カリス・ファン・ハウテン主演、ポール・バーホーベン監督、オランダ、ドイツ、イギリス、ベルギー映画、2006

あまり期待しないで見に行ったが、これはおもしろかった。大戦末期、ユダヤ人の歌手がオランダから連合軍に占領されているベルギーに逃げようとするが、家族は皆殺し。難を逃れた主人公はオランダのレジスタンス組織に加わり、SS諜報部の大尉に近づいてその愛人となるのだが、敵であるはずの大尉にホレてしまい、というところまではよくありそうなレジスタンスネタの映画。しかしここからがスリリングで、裏切りまた裏切りが続き、誰が味方なのかよくわからないことになる。しかも戦争が終わってからも、どんどん事件が起こって主人公は追い詰められる。戦争をネタにしたサスペンス映画として、非常によくできていると思う。2時間半ほどの尺だがまったく退屈させない。やはり脚本がよく練られているためだろう。主役の歌手を演じるカリス・ファン・ハウテンは、きれいすぎずブサイクすぎず、演技は非常にうまい。役によくはまっている。
最後のほうの展開はちょっとご都合主義的に感じるが、それは仕方ないか。あとやたらユダヤ人の悲劇性を強調するつくり、主人公らが悪人たちのかきあつめた財産をキブツに寄付するという筋立てはちょっとクサイ。レジスタンス運動の裏側を描こうとすると、このくらいの安全弁をつけておかないと無理なのか?