六○年安保闘争の真実

保阪正康『六○年安保闘争の真実』、中公文庫、2007

86年に講談社現代新書として出ていた『六○年安保闘争』を改題したもの。若干の加筆はされているらしいが、二、三の事実誤認以外の訂正はしていないと著者がのべている。内容はひどいもので、著者の個人的感慨(要するに岸首相に対する反感)が頻出し、ノンフィクションなのか、当事者の思い出日記なのかよくわからないものになってしまっている。あくまで事件史としての六○年安保(これに「闘争」という言葉をつけること自体、歴史家なら当然疑問を感じてしかるべき)を記述しようとしているのだから、著者個人の感想を無批判にはさみこむべきでない。保阪正康は自分自身が学生のときに安保反対運動に直面しているから、個人的な思い入れがあるのかもしれないが、こんな本を書いているようではノンフィクションライターとして失格。