やがて哀しき外国語

村上春樹『やがて哀しき外国語』、講談社、1994

村上春樹のエッセイ集。外国語習得の苦労とかそういうことを書いてあるのかと思ったら、それは表題作だけで、全体はアメリカ滞在記のようなもの。村上春樹自身は自分は英語があまりできないようなことを書いているが、ちゃんとコミュニケーションはとっているし、アメリカで授業ももっているのだから、こちらとはレベルが違う。それでもプリンストンに住んでいたときのエピソードは、自分もいたところだから、なつかしい。プリンストン・パケットとか、あったなあ。ニューヨークから一時間も電車でいけば、もう植民地時代がそのまま残ったような小さい町に出る。
中でいいのは、村上春樹が作家生活をはじめるようになったエピソードが入っている「ロールキャベツを遠く離れて」。なれる人はなれる、なれない人はなれない。その機会が来なければ。ものを書くというのは厳しいものだと思う。