ちいさいぶつぞう おおきいぶつぞう

はな『ちいさいぶつぞう おおきいぶつぞう』、幻冬舎文庫、2006

はなの仏像エッセイ。大学では東洋美術を専攻していたといい、それなりの知識は持っているが、この本は専門家の解説や半端な知識の開陳ではない、読んでいて楽しいエッセイに仕上がっている。これは著者の人柄と仏像への愛情がいい形で組みあがっていることの果実だろう。訪れている寺は奈良が6割、京都が4割だが、一度にたくさん回っているのではなく、時間のあいまを割いて、一カ寺、一カ寺、ていねいにまわっていることが文章から読み取れる。奈良の寺はけっこう離れたところに分散しているから、仏像好きな人でも近くに住んでいないとまわるのは大変なのだ。文庫本だが、カラーの写真やカラーの(おそらく著者自筆の)イラストがたくさん添えられていて、これがとても感じがいい。仏像になじみのない人にとっても、心をひかれる一冊だろうと思う。