北朝鮮「虚構の経済」

今村弘子『北朝鮮「虚構の経済」』、集英社新書、2005

北朝鮮の経済事情を比較的新しいデータを使って描写した本。著者の前著『中国から見た北朝鮮経済事情』の続編にあたる。北朝鮮の統計に大きな問題があるので、北朝鮮経済の実情は貿易相手国の統計を使うことができる貿易統計と韓国その他の推計値を通じて知る以外にないが、本書はその課題に比較的よく取り組んでいるといえる。

北朝鮮の「経済改革」と一飯にいわれる2002年7月の「経済管理改善措置」は実際には公定価格を引き上げただけのもので、経済改革とはいえないこと、アメリカがKEDOを通じて供与していた重油50万トンは北朝鮮が輸入していた石油の約三分の一にあたり、かなりのダメージを北に与えただろうこと、少なくなったとはいえ北朝鮮経済は中国にかなり依存していること、などがわかる。やや残念なのは韓国と北朝鮮の経済関係に関する記述が比較的薄いことだが、これは著者が中国屋であることを考えるとやむを得ないか。