アメリカの宇宙戦略

明石和康『アメリカの宇宙戦略』、岩波新書、2006

シャトル計画、ポストシャトルアメリカの宇宙計画、ミサイル防衛の三つのテーマを中心にアメリカの宇宙戦略を描いた本。シャトル以後の有人宇宙船、月探査計画についてあまり読んだことがなかったので、その部分は参考になった。しかし全体としてみると、散漫な印象はまぬかれない。シャトル事故とその後の問題、シャトル以後の宇宙計画の部分はきちんとつながっているが、テロ事件以後のアメリカの対応について書かれている4章は不要。またその後のミサイル防衛を扱った章は、宇宙探査を扱った章と内容的に完全に切れている。「アメリカの宇宙戦略」とうたう以上は、普通の読者は軍事利用、非軍事利用を含めたアメリカの宇宙戦略がトータルに書いてある本を想像すると思うが、この本はそういう本ではない。宇宙の軍事利用はミサイル防衛だけではないし、宇宙探査との技術的な共通点などを書かないのなら、この本に入れる必要はないと思う。どうも薄い内容を水増ししたような印象が強い本。