自壊する帝国

佐藤優『自壊する帝国』、新潮社、2006

「外務省のラスプーチン佐藤優によるソ連解体の記録。著者が外務省に入省した1985年から1991年のクーデタ失敗までの事件が描かれている。テーマとしては宮崎学との対談「国家の崩壊」と同じだが内容は重複していないので前著を読んでいても十分楽しめる。というよりこちらの方が、著者が直接接触したソ連の人々に焦点をあてていて、数段おもしろく読める。

ふつう暴露ものは次の本が出るたびに「出がらし」になっていくことが多いが、著者の本はまったく逆で一作ごとにおもしろくなっていく。この本のスリリングなところは、著者がどうやって一人前の情報屋になっていくかという過程と、その中で出会った人々のキャラクターがとても印象的に描かれている点だろう。ソ連を引きずり倒そうとする者、共産主義に心身をささげる者、さまざまな登場人物はみな魅力的。もうひとつは宗教とのからみで、これでこの本はさらにおもしろくなっていると思う。ロシアと宗教のかかわりをここまで突っ込んで書いた本としても群を抜いている。どのページにも発見がある良書。