「朝鮮半島」危機の構図

田中良和『「朝鮮半島」危機の構図』、ミネルヴァ書房、2006

著者は現役の朝日の記者でソウル支局長を1985年から89年まで務めた人物。内容は著者が朝日新聞の社内向けの調査レポートで1995年から2004年までに発表したものの中で、韓国、北朝鮮関係のものを採録したというもの。テーマの中心は北朝鮮と韓国の経済危機とそれへの対応。

帯に森本敏の推薦文がついているが、ほんとに内容を読んでから書いているのだろうか?一読して、内容が薄い。特に北朝鮮に関するものは既存の文献をまとめただけで著者の独自の分析はほとんどない。新聞社の調査レポートはこれでも間に合うのだろうか。中国やベトナムの改革政策との比較も一応されているが、政治体制と経済政策の相関についての突っ込んだ分析はない。金正日体制の今後についてのシナリオもそれぞれのシナリオの根拠はあいまいなまま。韓国の北への経済協力についても、北で事業を展開する際にどういう問題が出てくるかについての分析は甘い。この内容で3500円とって本を売るのは詐欺に近いのでは?ちょっとどうかしていると思う。