ウルトラ・ダラー

手嶋龍一『ウルトラ・ダラー』、新潮社、2006

NHKワシントン支局長「てっしー」がNHKを辞めて書いた国際諜報サスペンス。ベストセラーなのでまあいずれ文庫本になるに決まっているけど、ブックオフにおいてあったのでついつい買ってしまった。こういうことをしているから、家のスペースが・・・。

内容はまあてっしーの情報力でじょうずにまとめられている。盛り上げ方もじょうず。こういう話はディテールがきちんと描きこまれているかどうかでおもしろさが決まるが、そのへんもぬかりなくできている。オチもいちおうついている。ちょっとこのオチはいまいち落としきれていないような気もするけど(中国が台湾有事への日本の介入を阻止するために北朝鮮核兵器をもたせる、というようなことをするかなあ)。

しかし気になる点もいくつか。ウクライナ巡航ミサイルはトマホークのコピーだというが、トマホークは地形照合データがないと飛ばせないから、北朝鮮がそんなものを手に入れても使えないだろう。内閣官房副長官に「外交担当」というものはないし、だいたい事務方の副長官は次官経験者のポストだから副長官補がそのまま昇進するということはありえない。警察庁に「公安部長」というポストはないし、金日成「記念」大学という学校はない。いくら外報畑だといったって、てっしーがそんなこと知らないわけがないと思うけど・・・。