刑務官

坂本敏夫『刑務官』、新潮文庫、2003

刑務所の内幕ものは近年多く書かれているが、この本が類書と違うところは著者が元刑務官だという点。元受刑者からは、基本的に刑務官対受刑者の関係しかわからないので、刑務官同士の関係がいろいろとわかる本書の存在は貴重なものである。

内容は死刑執行にまつわる話からはじまり、刑務所内の事件、受刑者の管理、刑務官に対する不当な処遇、名古屋刑務所での刑務官暴行事件といった刑務所の基本的なことがらから、最新のトピックまでまんべんなくさまざまな問題がとりあげられている。特に刑務官の上下関係とそれを利用したいじめや処分の話は、官僚社会ならいかにもありそうな話だが、上下関係が絶対の刑務所内では程度がすごい。また名古屋刑務所の暴行事件は一種の冤罪事件だという著者の指摘については、その真偽はさておき一考に価する問題だと思う。刑務所ものの中でも出色の出来。