フランスの外交力

山田文比古『フランスの外交力』、集英社新書、2005

フランスの独自外交の淵源を多面的に検討した本。大西洋同盟、ヨーロッパ、アフリカ、文化政策、軍事力といった観点からフランスの独自外交への志向性が検討されている。著者は駐仏公使で、情報はよく整理されており、極端におかしなことはいっていない。数箇所挿入されているコラム(諜報機関、大統領の専管領域、フランス軍など)も勉強になる。

手際よく整理されている本だが、肝心な問題、つまりフランスの独自外交といってもそれはアメリカの力と存在に対してどこまで抗えるのか、結局フランス外交はどこまで「独自性」を振るえるのか、という問題については直接の答えを出せていない。冷戦期の「バランサー」政策が有効でなくなった後、フランスの立場はどこにあるのか、EUは大西洋同盟の代わりになりうるのか、といった問いに対する答えは本書を読んでも見つからない。もっとも著者自身、フランスの独自外交は一種の「あがき」だとしているので、その独自性について過大評価はしていないと思うが。