現代ドイツ

三島憲一『現代ドイツ』、岩波新書、2006

ドイツ統一後の時期にしぼって、ドイツ国内でのさまざまな社会的問題に関する論争をフォローした本。外国人労働者、統一後の旧東独との関係、湾岸やユーゴスラビアの戦争に対する派兵といったさまざまな問題が取り上げられているので、それらについての論争史を簡潔に知ることができる。

しかし著者のやり方は自分のイデオロギーで論争を裁断するというもので、あらかじめ相手の顔を黒く縫ってからその黒さを非難するというていのもの。これでは著者の議論のまとめ方が果たして公正なものなのかどうか、読み手に疑問がわくのは当然。しかも「進んだ」ドイツの論争に「遅れた」日本の姿が対置されるというやり方も著者のいつものパターンだが、何とかならないのだろうか。EU統合の強化をコスモポリタニズムへの移行として、それが市場のグローバル化に対抗するなどという議論は笑止千万。