家庭習慣の教えを論ず

福沢諭吉『家庭習慣の教えを論ず』


福沢諭吉の教育論。これは非常にまともなことを言っている。

まず人として必要なことを4つ、健康を維持すること、生計をたてること、子女を産み育てること、社会を形成すること、をあげる。その次に人生の楽しみとして趣味を持つこと(歌舞音曲)をあげる。これで5つ。このことを身につける必要があるという。

これをきちんとできることが人として大事なことで、それまでの教育は読み書きに偏りすぎているという。読み書きを教えることは教育の一部にすぎず、本当に必要なことは、まともな人を育てるということ。逆に、読み書きだけできて、まともな人を育てられていないことがあれば、それは大問題。

教育において大事なことは、その人が持って生まれたものを伸ばし、それを人として必要なことをできるようなレベルにすること。これはいつかはできることかもしれないが、親がきちんとできるようにするのとしないのとでは、その速度が違う。

教育で間違っている例を2つあげているが、1つは子供が誤って服を汚してしまったことで、子供をきつく叱ること。もう1つは子供が誤って柱に頭をぶつけたことで、柱の方に怒りをぶつけること。これでは子供を正しく導くことはできなくなる。

そもそも子供の教育といっても、本に書いてあることを教えることが大事なのではなくて、親がしていることを見せることが大事。これができていないと読み書きを教えても意味がない。

やはり福沢諭吉はえらい人。これを明治の初めにきちんと言っている。今もそのまま通用すること。