TERROR テロ

「TERROR ─テロ─」、橋爪功、神野三鈴ほか出演、アステールプラザ大ホール、2018.2.21


F. v. シーラッハの戯曲の舞台公演。一昨年に、橋爪功の「朗読劇」形式で公演があったが、今度は通常の演劇形式での公演。橋爪功は、弁護人役。神野三鈴が検察官、ほかの配役も上手な人ばかり。

休憩25分を含めて3時間の公演なので、けっこう長いのだが、証言の場面で2時間近く、検察官と弁護人の休憩で30分弱、その間に観客=参審員の投票があって、判決言い渡しが10分ほど。普通は3時間の演劇公演はかなり集中力が切れてしまうのだが、これは大丈夫。このことだけでもすごい。

脚本がしっかりしていて、演技もいいというだけでなく、この演劇の形式、つまり「法廷の弁論を聞いて、客が投票で判決を決め、その結果で結末が変わる」というのがいい。見るだけの客ではなく、自分も参加者ですよというつくり。法廷劇の性格を最大限に利用している。

一昨年の朗読劇では、4公演全部が、「有罪」つまり、テロの爆弾にされた旅客機を撃墜したパイロットが悪いという結果だが、この公演も「有罪」。しかし、投票は217対199で、非常に僅差。パンフレットを見ると、世界中のほとんどの公演で、圧倒的に「無罪」が多く、「有罪」ばかりの日本は異常。しかも、日本は500票対2000票くらいで、「有罪」が多かったのだが、今回は差がないから、かなりの変化。おそらく、他の公演では、「無罪」になった回もあるだろう。

こういう問題は、論点の選び方で結果がかんたんに変わるものだが、弁護人の最終弁論では、「今は戦争中です」というのが決め台詞になっていて、アメリカやヨーロッパで、「無罪」が多いのはこれが原因だろう。一昨年は安保法制の余韻があったから、「憲法で禁止」というのが、日本公演の投票を左右していたはず。人間の意見なんか、ちょっと事情が違えばいくらでも変わるのだ。

椅子だけのシンプルな舞台もよかった。これは行けてよかった。