ジャンヌ・ダーク

「ジャンヌ・ダーク」、イングリッド・バーグマンホセ・ファーラーほか出演、ヴィクター・フレミング監督、アメリカ、1948


キャストも監督も豪華な感じだなーと思ってみた、この映画。しかし、長すぎ、安すぎ、今のセンスでは見られない、というものだった。

時間は2時間25分なので、まあいいとして、衣装やら何やらすべて安い感じ。なんでこの時期のハリウッド映画で、イングリッド・バーグマン主演、ヴィクター・フレミング監督なのに、こういうことになるのかというと、独立プロの映画だから。お金をかけられなかったのね。戦闘シーンなどない。しかも、最後のジャンヌの火刑の場面以外、ほぼ全部セット撮影。いかにも書き割りな感じの空や、みすぼらしい衣装(これは史実っぽい?)など、悲しくなりそう。

そして、いちばん肝心な話の出来だが、ちょっとついていけない。昔の映画だから、ジャンヌ・ダルクを引いた視線で見るという考え方はなく、ジャンヌ・ダルクは、信仰の人。神が直接ジャンヌに語ったことを実行するだけ。信仰の奇跡みたいなことで、信心がない人が見てもあまり説得されない。

特に、後半、ジャンヌがブルゴーニュの軍隊に捕まって、火刑になるまでの下りは、「これは助けてやろう」みたいなことになりかかっているのに、ジャンヌは自ら火刑を選ぶということになっていて、作劇上はこっちの方がいいのだろうが、あまりジャンヌの心情に共感できない。

イングリッド・バーグマンは、すっぴんで出ているわけはないと思うが、あの美人がどうなっちゃったのかというくらい、きれいではない。「男装」ということになっているが、この映画では単に髪の毛を短く切っただけ。これは男装じゃないし。しかもあまり上手いとは思えない。フランス王役のホセ・ファーラーはいいと思うが。

この映画のもとは、舞台で、この舞台の演出をヴィクター・フレミングが、ジャンヌ役をイングリッド・バーグマンがしたので、それをそのまま映画にしたのがこれ。安い感じなのも、舞台をそのままということならしかたがない。しかし、映画としての工夫はなく、つまらない。ヴィクター・フレミングも、なんでもすばらしいというわけにはいかないのだ。