角川映画 1976-1986

中川右介角川映画 1976-1986』(増補版)、角川文庫、2016


角川映画、特に最初の10年間に焦点をあてたクロニクル。角川(KADOKAWA)の映画製作そのものは、現在の会社も続けているのだが、この本は特に角川春樹が主に関係していた映画を扱う。

こうしてみると、角川映画は自分もけっこう見ている。ただ1980年代になってからは見ているペースが落ちていて、「里見八犬伝」(1983)の後はそんなに見ていない。「メインテーマ」、「麻雀放浪記」、「Wの悲劇」くらいはちょっと見てみたいけど。

これだけの期間にこれだけ多数の映画を作って、実際におもしろいのだから、やはり角川春樹はえらかった。横溝正史シリーズが取り上げられていた事情、「復活の日」、「戦国自衛隊」の企画、角川三人娘とアイドル路線、アニメ製作など、それぞれの映画がどういう事情で出来上がっていたか、角川春樹の関与、角川春樹大林宣彦ほかの監督の関係など、映画の紹介を越えて、角川映画の製作側に注目している。

メディアミックスという手法の力、大規模な宣伝、実質プロデューサーの角川春樹の眼力、監督と俳優のマッチングなど、角川映画が落日の日本映画界でヒットを飛ばせた理由があり、非常に納得がいくもの。

角川春樹が薬物事件で刑務所行きになり、出所してからも映画製作関わっていたことと、それがコケたことなどの後日譚も書いてある。実際、角川春樹がいなくなった後の角川映画は見る気になる作品はほぼなし。現実に日本映画は、アニメ、アイドル、安い原作の映画化作品ばっかり。そういうものになりましたということ。