出世と肩書

藤澤志保子『出世と肩書』新潮新書、2017


著者は、産経新聞記者。山形支局長。1967年生まれ。ずっと中央にいて、コロンビア大学に留学し、そして山形支局(一人支局なので、実質的に通信部みたいなもの)に行かされたという人。

組織の人は名刺で仕事をしている人。この人が山形に行かされたり、タブロイド紙に行かされたりして、どういう目に会ったかということが最初に書かれている。取材相手が、この人の携帯番号を抹消していたり、取材先に出していた年賀状(主に霞が関)の返信が来なくなったりしたというもの。人間、肩書で相手を判断しているのだ。

本の内容は、いろんな肩書の価値がどういうものかということ。企業、官庁、国会、勲章、外資企業に分けて書かれている。参考にはなった。とはいえ、官庁のところはある意味多すぎ、ある意味少なすぎ。役所の肩書は微妙に省ごとに意味が違うし、この人は国交省が取材先だったらしく、そこには詳しいが、ほかはそうでもない。また、会社の肩書は、会社ごとで違いすぎ。この本では不足。

といっても、新書だから、このくらいの知識は持っていてもいいもの。あまり一冊にすべてを求めるのは生産的ではない。新聞社の事情はもっと詳しく書いてもらいたかったが。