宗教に関心がなければいけないのか

小谷野敦『宗教に関心がなければいけないのか』ちくま新書、2016


小谷野先生の宗教ネタ本。このタイトルだけで、というか、内容を読まなくても結論だけはわかる。「宗教に関心がなければいけないという考えはおかしいよ」ということ。

しかしそんな結論部分はどうでもよく、それまでのネタ振りのおもしろさがこの本のありがたいところ。知識のある人は宗教に関心をもっていなければまともではないような雰囲気が日本社会にあるが、ぜんぜんそんなことはないし、だいたい宗教は信者以外にとってはどうでもいいでしょという話。

小谷野先生は、あいかわらず徹底的に世俗の人で、自殺を考えたことはなく、霊魂は存在せず、死は怖いと言っている。死は怖くても、宗教には頼らないし、死後の世界もないと思っているから何の問題もない。宗教に入っている人は死は怖くなくなるのか?そんなことはないだろう。逆に、死を怖いとは思わない人は、宗教を信じていなくても、数は少ないだろうが、いるだろう。

個人主義をいつでも貫徹できれば宗教はいらないことになるのだろうが、そんな人はいつも少数。あっちゃんは、そこはあきらめているから平気なのだろう。宗教はおもしろいけど、いらない人にはなくてもよし。たぶん、自分も死にそうになっても宗教を信じることはないだろう。