セックス幸福論

森林原人『偏差値78のAV男優が考える セックス幸福論』講談社文庫、2016


これは名著。著者に興味があって読んでみたが、これほどとは。著者は、AV男優で、中学、高校が筑波大付属駒場、中高時代にAVにハマり、大学受験に失敗、専修大に進学したがそこでAV男優の道に入り、大学は中退していまに至るという経歴の人。

セックスを見せることを職業としている人だが、見せると言っても、ただの演技ではなく、実際に体が触れ合っているわけだから、「ふり」ではできない。実際に好きでなければならない。その上で、女優と人間関係をつくったり、自分の体を自由にコントロール(男優の演技はタイミングが決まっている)したりすることができなければならない。

大切なことは、この人がセックスの中から、愛情、身体とセックスの関係についてきちんと真実を掴んでいるということ。しかも、すべてがこの人の体験に裏付けられており、説得力のない話はない。

中でもAV監督の代々木忠の話が印象深い。代々木忠は、AV業界のレジェンドだが、その言が「イクとは相手に自分を明け渡すこと」というもの。これはほんとうにそう。代々木忠は70歳を過ぎているというが、それでもセックスでは現役という。

なにより、すべてのエピソードがおもしろい。しかも達意の文章。これは聡明な人にしかできないこと。頭がいいことがムダになってない。