帰ってきたヒトラー(映画版)

帰ってきたヒトラー」、オリヴァー・マスッチほか出演、デヴィッド・ヴェント監督、ドイツ、2015


この映画、田舎には回ってくるのが遅く、やっと見られた。大きくはない劇場で土曜日だったことを考えても、客はほぼ満員で、それなりに人気はあるということ。

とにかく、非常に笑える。小説を読んでいるからというのもあるが、読んでいなくても笑えるだろう。ヒトラー役のオリヴァー・マスッチは、この映画でブルーノ・ガンツを超えたわ。実際、劇中でブルーノ・ガンツの名前が出てきたり、「これまでのヒトラー役者と自分を比べている」というセリフが出てくる。

ついでに、「ヒトラー最後の12日間」のパロディ場面も入っている。テレビ局の幹部ゼンゼンブリンクが、部下を4人だけ部屋に残るように命じて叱責する場面。ここも相当に笑い転げた。

マスッチは、ヒトラーの態度をよく再現できている。個人的に一番好きなのは、最初にテレビに引っ張りだされて演説する場面。放送事故になりそうな沈黙が続き、観客が固唾を呑んで見守っている場面。話の始め方、内容、まさにヒトラー

話題になった、ベルリンの町にヒトラーが繰り出してゲリラ撮影をする部分、ガチでやってるが、周囲の人々は大喜び。やたらと写メを撮られている。もちろん、編集が入っているのだが、もはやドイツでも「ヒトラー批判」に多くの人が飽きていることは読み取れる。

NPDの事務所に突撃とか、AfDもちょっと出てきたりして、これも笑う。緑の党はセリフだけ。しかしヒトラーにほめちぎられている。

最後の方はちょっと浅い展開になってしまい、少し残念。あまり笑えなかったし。でも、現代ドイツでヒトラーおもしろいですねというネタ映画を作って終わることはできないので、これはしかたなし。全体としてはとても満足。