巨匠とマルガリータ

ブルガーコフ水野忠夫訳)『巨匠とマルガリータ』上、下、岩波文庫、2015


河出書房の世界文学全集に入っていた翻訳が岩波文庫になったもの。この本、もう20年以上前に読んだのだが、ひさしぶりに再読。

奇想天外なエピソードが頻出し、一度読んだくらいでは、内容がきちんと把握できない。こっちの負けだ。しかし、胸を打つのは、巨匠が作中で書いた小説、イエス(作中ではヨシュア)を処刑したポンティウス・ピラトゥスの姿。ピラトゥスの呪われた苦しみを、巨匠は「自由だ!}と呼びかけて解放する。巨匠と愛人のマルガリータも自由な者としてどこかに飛び去っていく。

昔読んだところでおぼろげに覚えているのはその場面。わからないなりに場面が頭に焼き付けられるということがあるのだ。

今回もきちんと理解することができなかったが、せっかく岩波文庫に入ったのだから、いつの日にかまた再読しよう。「原稿は燃えないものなのです」。