古都(1963)

「古都」、岩下志麻長門裕之ほか出演、中村登監督、松竹、1963


川端康成原作の小説の映画化作品。岩下志麻は、呉服問屋の娘と、北山杉の加工をしている村娘の二役を演じている。この北山杉の里というのは、周山街道の奥、ほとんど京北町に近いところにある中川というところで、当時(1963年)は京都市内には入っていなかった。いまでも、京都扱いはされないだろう。

最初の場面から、「京都の町家は禁門の変であらかた焼けているので、古そうに見えるけれども実は100年とは経っていない」という非常にイヤミなナレーションが入る。お話全編が、京都のええとこの娘(当時の西陣の問屋は今よりはるかに威勢があった)のスノッブ行動の見せびらかし。

西陣の娘(千恵子)は、長門裕之(帯職人、貧乏)と、吉田輝雄(呉服問屋の息子、金持ち)の二人から求愛されているのだが、貧乏人の長門裕之には、双子の姉妹の北山の娘(苗子)をあげることにする。自分は家のために金持ちと結婚。何様?という行動だが、これが京都人ということらしい。

この頃の岩下志麻は超絶美人。後年実際にそうなったように、きつそうな感じだが、それも美人度をさらに高めている。この人は、デビュー後そんなに間がない時期から、比較的最近まで、切れ目なく大量の作品に出ていて、しかも人生後半になってから名作にじゃんじゃん出ている。この映画も、演技は非常によい。大女優は若い時からちがうのだ。