野宿もん

かとうちあき『野宿もん』、徳間書店、2012


著者は、人生をより低迷させる旅コミ誌『野宿野郎』編集長。この本は、2010-11年の雑誌連載を書籍化したもの。

まず気になるのは、女性が野宿旅行をしていてだいじょうぶなの?ということ。寝袋など、一式持って移動するのだが、動物はともかく人間は何をするかわからないからコワイだろう。しかし、この本では襲われたなどという物騒な話は出てこない。旅先で会ったおじさんに「セックスしない?」と聞かれて、「おじさんは修行中でしょ」とさらっと流すくらい。

次の問題は当然寝場所。寝袋はあるとはいえ、土の上は冷たいし濡れるし、危ない。いちばんいいのは身障者用のトイレらしい。スペースが広くてカギもかかるので、野宿する人にとってはいい寝場所。

野宿者の敵はおまわりさんとヤンキー。おまわりさんは仕方ないが、ヤンキーはコワイだろう。とはいえ著者はさらっと切り抜けている。

あてのない野宿旅を何日もできるなんて、本当にぜいたくなこと。できれば野宿でなければもっと快適のような気もするが、これはこれで居心地がよいのだろう。著者はうらやましい境遇の方。