戦艦シュペー号の最後

「戦艦シュペー号の最後」、ピーター・フィンチ、アンソニー・クエイルほか出演、マイケル・パウエルエメリック・プレスバーガー監督、イギリス、1956


昔おぼろげに見たような記憶があるのだが、すっかり忘れていたのでもういいわ。原題は、The battle of the river Plate(プレート川沖海戦)。基本的にイギリス側から作られているので、そういう映画。

この映画の売り物は、「実物の艦を使いまくっている」ところ。最初に長々しい謝辞が流れている。アドミラル・グラーフ・シュペーは、米巡セーラム、英艦エイジャックスには英巡シェフィールド、アキリーズにはインド巡洋艦デリー(これの前身が本物のアキリーズ)、エクゼターには英巡ジャマイカが出る。砲撃で破壊されるところや、燃えているところはミニチュアだが、基本は本物、プラス、セット撮影なので、昔ならではの映画。

しかし、英艦はともかく、グラーフ・シュペーは、どうみても戦後の米艦にしか見えない。船が航行している場面は、どうみても米海軍にしか見えない乗員が・・・。これはざんねん。

グラーフ・シュペーは前半には出てくるが、後半の海戦では一方的に英側の視点で描かれていて、独側はほとんど出なくなる。まあ、これもしかたないか。しかし海戦シーンそのものは、かなりいい。英側にもガンガン砲弾は当たっているので血まみれだ。

この時代、まだ艦載レーダーというものがないので、見張りは全部人間の仕事。「日本海大海戦」と大して変わらない。これも非常にいいところ。

海戦がいったんすんで、グラーフ・シュペーがモンテビデオに引っ込んでからは、モンテビデオからラジオのアナウンサーの実況で話が進行。ぎりぎりまでグラーフ・シュペーがどうするかはわからない。群衆が息を呑んで見つめるところで、グラーフ・シュペーは大爆発して自沈。ラングスドルフ艦長の末路は描かれないで終わる。

英海軍の制服、信号ラッパ、伝声管での命令など、いろんなものが見られて楽しかった。軍人も昔っぽい振る舞い。