日本建築集中講義

藤森照信山口晃『日本建築集中講義』、淡交社、2014


藤森照信山口晃が、「明治以前の日本建築」を13箇所回って、講義をしていく本。明治以前に限定しているのは、藤森照信の専門分野が「明治以後の」日本建築だからだという。

しかし、藤森照信の知識量は半端なものではなく、日本建築、西洋建築、歴史のあっちこっちから何でも引用してしゃべり倒している。これはおそろしい。

建築を見ながら、その建築の所有者側の人から説明を受け、それを聞いてから場所を移して、論評していくというスタイル。山口晃は、のんびり聞いているようにも見えるが、受け方が的確。藤森照信赤瀬川原平老人力に対して青年力と言っている。知的な受けをできて、嫌味っぽく感じられないのは、相当なもの。

行っている場所は、法隆寺日吉大社、旧岩崎家住宅、投入堂、聴竹居、待庵、修学院離宮閑谷学校、箱木千年家、角屋、松本城三渓園西本願寺。この中で自分が見たことがあるのは、3つくらいしかない。

まあ見たといっても、この二人が見ているのに比べれば何も目に入っていないのも同然。そもそもこの本は、ただ読むためのものというよりは、実際にこれらの建築を訪問するための予習用の本。基本的に入ることができる建物を取り上げているので、ちょっとがんばれば行ける。

取り上げている建築の多くは西日本にある。これも行きやすいのでありがたい。投入堂なんかは行くのに労力がかかりそうだが、行けないことはない。松本城以外は、1年あれば行けそう。これを読むと実際に行かずにはいられない。