NONFIX エロスの行方・消えゆく”秘宝館”

NONFIX」、「エロスの行方・消えゆく”秘宝館”」、フジテレビ、2014.12.17


フジテレビの「NONFIX」で、秘宝館特集をやっていたので、見てみた。ディレクターは、これまでにも秘宝館のDVDを企画、監督している、村上賢司。ゲストに秘宝館好きの女子学生を呼んできた。次に出てくるのは、北海道秘宝館から展示物の人形を引き取ってきたという物好きな女性。この2人を案内役にして、「女性も好きな秘宝館」というつくりにしている。

さらに『秘宝館という文化装置』の著者の妙木忍を出してきた。この人は専門家なので、秘宝館の説明をさせている。始まりは、1972年10月にできた「元祖国際秘宝館・伊勢館」。自分の経営するドライブインにエロ人形を置いたことが元祖。ちゃんとこの秘宝館のコマーシャルも流している。

この国際秘宝館は、伊勢館、鳥羽館、石和館と3つあった。妙木忍が一番注目するポイントにあげているのは、医学展示。妊娠、性病などの展示物は、それ以前にあった「衛生展覧会」というイベントからの連続性があり、ただのセックス展示施設ではないという言い訳のためにおかれたのだろうというおはなし。

70年代後半から温泉地を中心に20館以上あった秘宝館。この展示物を作っていたのは、「東京創研」という会社の川島和人。もとは東宝の美術をしていた人で、遊園地の可動遊具も作っていた。この人は、元祖国際秘宝館にあった医学展示のような「暗い」展示はやめて、明るい、見せ方を工夫した展示物を作った。1979年6月にできた北陸秘宝館をプロデュースしたのはこの人。座るとブルブル震動する、100円遊具くらいの大きいサイズのペニス遊具もある。

熱海秘宝館は現存、稼働している数少ない秘宝館(嬉野武雄観光秘宝館と鬼怒川秘宝殿は、2014年で閉鎖)なので、たっぷり映している。ここは客が来ているのか、比較的、人形や展示物がキレイ。

東京創研が規模の大きい秘宝館を最後にプロデュースしたのは、1983年。理由は、家庭用ビデオの普及や団体旅行の衰退。

この番組の制作時点では、嬉野武雄観光秘宝館はまだ営業していたので、その最後の様子を映している。ここは規模が大きいので、館内の施設を稼働する電気代だけで月に20万円かかっている。運営を支えていたのは、館内のポルノショップの売り上げ。調子のいい時で月200万円ほど。これも規制が厳しくなり、売れなくなったため、運営もできなくなった。

ここも丁寧に映している。性器の接合部、女性器にはモザイクをかけているが、他はそのまま。これがテレビの性描写コードということか。ポルノショップはがらんとしていて何もない。来館者は若い人を中心にちらほら。東京から来たと言っている物好きな方もいる。

もぎりのおばちゃんにもインタビューを取っている。中野さんという、この人は開館当時から31年ここで働いているという人間国宝みたいな人。メンテナンスが行き届いていないので、動かない展示物が多いことを残念そうにしている。客から「こんなところで働いて」と説教されたとお怒りだ。

鬼怒川秘宝殿にも行っている。3月に取材に行っているが、ガラガラ。ここは1981年開業。嬉野に比べると相当小さい。人形が吉永小百合そっくりで笑える。ここは人形が多いが、本物の人体から型をとってつくられていて、型取りしているところの写真がたくさんある。ここにもマリリン・モンロー人形あり。秘宝館にはどこにでもあるなー。

ここの館長の北川さんという女性にインタビューをとっているが、元は夫婦で老後の小遣い稼ぎのために買ったのだという。ダンナは不動産屋さん。平日の来館者は10人以下。鬼怒川温泉自体がさびれていて、特に泊まりの客が少ない。この取材時点では5月のゴールデンウィーク明けには廃業するつもりだと言っている。年末までもったのだからえらい。

嬉野秘宝館のお葬式イベント(2014年4月20日)の様子も映している。都築響一トークショー、音楽ライブ(この参加者の一人は、この秘宝館に絵をたくさん残している絵描きの息子さん)、館内の物品全部のオークションと盛りだくさん。

もう熱海しか秘宝館は残っておらず、それも長くは残らないだろう(今年潰れたほかの2館の様子を見ていると、それも納得)から、記録として価値のある番組。ソフト化してくれたら買うのに。