立川談志 蒟蒻問答

立川談志ひとり会」、国立演芸場、1992.10.9


談志の昔の録画を見た。ネタは蒟蒻問答。

談志がまだ元気な時なので、晩年のつらそうな姿はなくて、ほっとする。うまいが、自分流に変えるということはなく、非常にふつうにやっている。

この録画では、演じ終わった後、談志が礼をしてさっさと下がるかと思ったら、下がらない。客は帰りかけているのに、苦しそうな顔をして、「声がかすれて聞きづらかったでしょう。落語を昔ながらにあんまり変えないでやると、今のような感じになってくるが、これは変えようがないんでね」などと言い訳している。「忘れていないというだけで、決してご満足いくもんじゃないんだろうけどもね、ただ近頃、この程度がオレの芸みたいになってきちゃってあんまりおもしろくない」つも言っている。

どうも型どおりにやったことに、自分で納得いっていないのだ。普通は自分の中でそう思っていても、わざわざ口に出しては言わない。でも、自分で納得のいかない芸をしたことが、自分で許せないのだろう。その後に中学校の先生に怒られたことまでわざわざ持ちだして、何か言いたかった様子。客もどうしていいのか戸惑っている。

こういう録画をよく残していたもので、普通はソフト化を断っていてもおかしくない。おかげで、型に収まりきらない芸人の姿を見ることができてありがたいのだが。