子連れ狼 冥府魔道

子連れ狼 冥府魔道」、若山富三郎、安田道代、大木実ほか出演、三隅研次監督、勝プロ、1973


若山版「子連れ狼」第5作。また監督は三隅研次に戻った。ということもあって、血しぶきの量はけっこう派手。

黒田藩の跡継ぎ騒ぎに介入させられる拝一刀。まず、黒田藩の依頼人が一人ずつ出てきて一刀に切られ、100両ずつを渡してついでに刺客を依頼する事情についておはなしするというややこしいもの。

依頼の内容は、黒田藩主は子供なのだが、実は女の子で、前藩主の愛妾の娘。男の子もいるのだが、そっちは幽閉されている。前藩主が、女の子を藩主にしたお墨付きを、藩主が懇意にしている僧、慈恵にわたしたのだが、この慈恵が柳生のスパイで、お墨付きを烈堂に渡すつもりだから、なんとか奪い返してくれというもの。

なんやらいろいろあるが、途中でこれも黒田藩の腰元という安田道代が現れて、前藩主、愛妾、藩主になっている女の子を三人共切ってくれという別の依頼を出してくる。もちろんこれは別料金。子供を切る依頼も、冥府魔道の一刀はさくっと引き受けるのでした。

お墨付きを柳生に渡そうとする慈恵は、一度は禅問答で一刀を退散させるが、船に乗って川を渡っているところで、一刀が船底に穴を開けて、沈んできた慈恵を切ってしまう。そのままお墨付きも頂戴する。柳生烈堂は、カラのお墨付きの入れ物を掴まされて怒っているがもう遅し。この回の烈堂は大木実。かなり珍妙だが、これはこれでおもしろい。

お墨付きをゲットした一刀が古寺にこもると、天井から安田道代の声がして、お墨付きを開けという。すると天井から変な液体が落ちてきて、その液体に触れたお墨付きはあらふしぎ、字が煙のように消えてしまうのだ。スパイ大作戦レベルのすごさにおどろいた。

この白紙のお墨付きを藩主に直接渡すことを口実にして、ついでに前藩主、愛妾、女の子を切ってしまおうという大作戦。途中で柳生が邪魔しにくるが、そんなものはあっさり全滅。黒田藩主の御前で、お墨付きを出せと言われ、白紙のお墨付きを出すと、「切れ」ということになって、黒田藩の侍が総掛かりで切り込んでくる。これも全部切り殺し、最後に、奥に逃げ込んで、じたばたしていた前藩主の加藤嘉の首をスパッとはね、ついでに愛妾と女の子の首もゴロゴロと…。

ラスト、船に乗って漕ぎ出そうとする一刀親子のところに、安田道代が現れ、自決して果てるところを悠然と一刀が去っていくのでした。


後半は、とにかく一刀が斬りまくっているし、キャストは前作にまして豪華。最初の刺客依頼でさえ、戸浦六宏やら内藤武敏やらが出てくる。安田道代に加えて、女スリで佐藤友美も登場。烈堂の大木実、前黒田藩主の加藤嘉、慈恵上人の大滝秀治、家老の岡田英次、仮面侍集団の棟梁が須賀不二男ら、何でも出てくる。

この作品は、脚本が小池一夫と、中村努という人の連名になっている。コミック版のエピソード(女スリの佐藤友美と大五郎の交情)はちょっと余計だが、とにかく人がサクサク切られて非常にたのしめた。