NHKスペシャル カラーでよみがえる東京ー不死鳥都市の100年

NHKスペシャル」、「カラーでよみがえる東京~不死鳥都市の100年~」、2014.10.19


NHKが根性出してつくった力作。白黒フィルムのカラー化を、東京の風景に限定してやってみたというもの。

明治の終わり頃から、比較的近年まで、記録映像がかたっぱしからカラー化されている。東京のレンガ造りの建物は、どれも辰野金吾設計。

関東大震災直前、東京市の人口は220万人で、現在の東京の人口密度の2倍だった。見渡す限り家だらけで、緑地がまったく見えない。

震災後の町や、火災が町をなめつくしているちょうどその場面が映っている。この頃のカメラは今に比べてずっと重いのだから、撮影は命がけ。黒焦げの死体も映っている。帝国劇場も燃えているし、浅草の凌雲閣は半壊。魚河岸は消えてしまった。上野公園は被災者の避難所になっている。

摂政だった昭和天皇に、後藤新平が説明している場面もある。東京の復興はあっという間で、歌舞伎座やら、隅田川の橋やら、魚河岸が移転した築地市場やら、サクサク新しい建物ができている。お金があると、復興のスピードが違うのだ。

満州国建国後に、日章旗満州国旗を振っている。まだこの頃はのんびりしていて、宝塚歌劇をファンが撮影した映像がある。音楽はちょっと今と違うが、やってることはほぼおなじ。

日中戦争が始めると、幼稚園のお遊戯も戦争のマネ。1938年に国家総動員法ができると、だんだん戦時色がはっきりしてくる。1940年の東京オリンピックは中止だが、設備は半完成だった様子がある。1940年=紀元2600年には記念大観兵式。白馬に乗って閲兵する昭和天皇や、戦車、牽引車と大砲の洌。

太平洋戦争が始まると、銀座で防空壕に入る人々や、日本橋の防空演習、上野で海軍に入る早稲田の学徒の出陣式をやっている。43年10月の神宮外苑での学徒出陣壮行式もある。これはよく映る映像なのでわかるが、紅白の幕以外は、学生服の黒と、軍服のみ緑色だけ。

東京空襲が始まると、なんでも黒焦げ。当然、焼死体多数。浅草、銀座、日本橋、両国も一面の焼け野原。木造建築ばかりのところは、本当に何も残っていない。

敗戦後も人々の服は、灰色や緑色ばかり。焼け跡では子供が屑拾いをしている。シラミとりのためにDDTをまかれる子供の頭や、敗戦直後にすぐにお祭りが復活したところも映っている。

虎ノ門アメリカ大使館で整列するマッカーサーと幕僚や、マッカーサー昭和天皇の写真、銀座の和光が接収されて連合軍用のPXになっている映像。日本国憲法公布式もある。東京裁判の法廷もカラーだと新鮮。人間だけでなく、戦意高揚を煽ったとみなされた銅像も撤去が決定。これで神田須田町の広瀬中佐像は撤去。上野の西郷隆盛像は美術品として価値があるという理由で残された。

マッカーサーの帰国記念式では、20万人の人出。1958年には、途中までできた東京タワーがある。安保条約反対運動は、ラジオで実況。日本の支離滅裂ぶりを皮肉ったアメリカの記録映画があって、三島由紀夫がインタビューに答えている。

東京オリンピックで、競技施設や首都高速が作られ、あっという間に風景が変わっていく。東京オリンピックは映画で見たから、カラーでも違和感なし。

1970年代以後はカラー映像があたりまえだから、見慣れたものばかり映っている。

この映像の貴重なところは、現在と白黒フィルム時代で同じ場所を見せているところ。色がついていると、こんなにも印象が違うのだ。この番組用のわずかなフィルムでも、カラー化の手間はたいへんなもの。NHKが気合を入れるとなんでもできるのだ。