民主党政権 失敗の検証

日本債権イニシアティブ『民主党政権 失敗の検証 日本政治は何を活かすか』、中公新書、2013


船橋洋一を中心とするシンクタンクによる、民主党政権論。章立ては、「マニフェスト」(中北浩爾)、「政治指導」(塩崎彰久)、「経済と財政」(田中秀明)、「外交・安保」(神保謙)、「子ども手当」(萩原久美子)、「政権・党運営」(中野晃一)、「選挙戦略」(フィリップ・リプシー)、まとめ(船橋洋一)。

カバーされるべきネタはだいたいカバーされているし、執筆者は、それぞれの分野で見識のある人。なので、民主党政権の何がまずかったのかという問題については、この本一冊でだいたいわかる。

どこの章を読んでも、失敗の原因はおおよそ3つくらいに集約される。「政策は実現可能性を無視して看板だけが大きく掲げられ、実現の方法はまともに検討されていなかった」、「政権運営のための組織づくりができておらず、頻繁に首相、大臣らが交替し、それぞれの役職者がバラバラなことをやっていた」、「民主党内部のガバナンスが制度的にできておらず、議員たちは言いたいことを勝手に言うだけで、意見をどのように集約するかという仕組みができていなかった」というようなこと。これに、小沢一郎と他の幹部の対立や、尖閣諸島漁船衝突事件などの要因が入ってきて、政権は次第にグダグダになっていったというもの。

政権担当のための準備ができていなかったところに、自民党が勝手に倒れたので棚ぼたで権力を手にすることができたが、実際に権力を手に入れてみると、どんどんボロが出てきて、収拾がつかないことになっている。ほかのところでも読んだような話だが、きちんと事実を組み立てて、整理して説明をしているところは貴重。

政権を失った後の民主党を見ていると、この本で書かれたことが民主党の党内で検証され、改善のために具体的な方策が取られているとは思えない。党内の意思決定はあいかわらずグダグダだし、政権に対して建設的な批判をしていこうとする態度も見られない。これでは次の選挙も、民主党が勝てる見込みは薄いし、もしその次もダメということになると、民主党以外の第三勢力を建てようという動きはますます激しくなるだろう。