ヨーロッパ企画 「ビルのゲーツ」

ヨーロッパ企画、「ビルのゲーツ」、アステールプラザ中ホール、2014.9.25


この公演は、行こうかどうしようか、直前まで迷っていたのだが、結果的には行ってよかった。非常によい舞台。

舞台装置は、舞台全体に大きな壁があり、その真中の階段の上に大きな扉があって、ICカードをかざすと開く。扉が開くと、その奥には階段がある。階段を上がると、また同じ形式の階に出るので、ビルの階段をどんどん登らなければならない。その繰り返し。

この一見単調な設定は、扉を開けるためにいろんな要求事項(最初はクイズだが、だんだんロープレのダンジョンみたいになってくる)が次々と出され、階段を登る人々が、変な解決策を考えたり、人間関係がややこしくなったりすることで、演劇的におもしろくなっている。最初の10分は、これで2時間、芝居がもつのか?と思っていたが、時間がたつほど、おもしろさのペースが上がっていって、非常に楽しめるようになっている。

一行は、最初は謎の会社のCEO(ビル・ゲイツと言いたいらしい)に会うために階段を登っていたはずなのだが、途中から何のために階段を登っているのか、本人にもよくわからなくなってくる。そこを理屈っぽく説明するのではなく、よくわからないままで客を笑わせながら劇が進行するのが、脚本家の上手なところ。

最後は一人だけが残り、上がるだけ上がったところでどうなるか、ということになるのだが、登り切る前に答えは出ているので、この終わり方でいいのだ。くどい説明をしないで、サクッと片付けるところもうまい。

この劇団の芝居は、毎年広島公演があるので、見られるときだけは見ていたが、この芝居は一番の出来。広くはない舞台をフルに使ってちゃんと見せているし、場の転換も工夫されている。自分は喜劇でもそんなに笑わないが、ゲラゲラ笑わなくても、この芝居の設定そのものが喜劇の王道を行っていることはわかる。

前の方に座っていたので、劇場全体の入りはよく見ていなかったが、1階席はほぼ埋まっていた。ちゃんとお客が来ていてなにより。また、女性客がとても多い。確実にファンをつかんでいるので、またいい芝居をしてほしい。