子連れ狼 子を貸し腕貸しつかまつる

「子連れ狼　子を貸し腕貸しつかまつる」、若山富三郎、伊藤雄之助、渡辺文雄ほか出演、三隅研次監督、勝プロ、1972


子連れ狼は、萬屋錦之介のTVシリーズを先に見てしまっていたので、若山富三郎の映画版にはなかなか手がつかなかったが、ようやく見た。これはおもしろい。

TVシリーズのように、何の前振りもなくいきなり拝一刀が刺客をやっているということはなく、TVの第一シリーズ「刺客街道」にあたる柳生一族による拝家襲撃の話から始まっている。当然のことながら、TVシリーズは、映画があたって人気が出てから作られているので、そういう作りでもよかっただけで、本来はこの映画のように、「なぜ拝一刀が子連れで刺客をしているのか」から話が始まらないとわけがわからない。

原作のいくつかの話をつぎはぎして作っているが、基本は、TVシリーズの「鳥に翼獣に牙」で描かれた、宿場で目標（小山田藩家老＝内田朝雄）を待ち伏せして、悪人どもと同宿することになるエピソード。TVシリーズで賀川雪絵が演じていた、枕探しもする娼婦役を真山知子が演じている。これはいい感じの出来。

TVシリーズとは違う映画版の見どころは、なんといっても若山富三郎の拝一刀。ちょっと太っているが、その分貫禄がある。しかも若山富三郎の殺陣の魅力が十分に発揮されていて、悪人どもを皆殺しにする場面では、とにかくガンガン斬りまくっている。命乞いされても関係なし。腕は飛ぶし、血は噴き出るし、容赦なし。脳天唐竹割りもやっている。

柳生烈堂を演じているのは、伊藤雄之助。この人も非常にいい。TVシリーズの烈堂、高橋幸治、西村晃、佐藤慶の誰にも対抗できる好演。

この映画版は6作あるので、見るのはたいへんそう。まあ、ソフトはあるので消えてなくなりはしないから安心。