間諜中野学校 国籍のない男たち

「間諜中野学校 国籍のない男たち」二谷英明岩崎加根子近藤宏ほか出演、野口晴康監督、1964


中野学校もの映画の日活版。いろいろとおかしい。

二谷英明が、戦後だいぶたってから、女に拳銃を向けられる。「おまえはわたしの母を殺した!」という女に、二谷英明は、「おまえはわたしの娘なんだ」と告白。この時点で、見る気は80%くらい失せた。

話は、二谷英明の回顧談。陸軍少尉の有坂(二谷英明)は、いきなり「陸軍省情報研究所」にリクルートされる。そこでは原田中尉(近藤宏)ほかの学生がいた。原田は上官なのに、有坂がタメ口なのはおかしいでしょ。それに二谷英明は陸軍少尉にしては年を取り過ぎ。

いろいろ猛訓練があって、最後の試験は、軍需工場に潜入して秘密を奪い、工場の中枢部に模擬爆弾を仕掛けてくること。しかし潜入のために警備員の首を絞めて失神させるのはまずいでしょう。潜入がバレバレだ。案の定、有坂少尉以外は、捕まってしまう。有坂少尉は、成績優秀ということで学校の教官として残される。

その後、有坂中尉(昇進しました)は中支派遣軍に、特殊任務で派遣される。大東亜戦争開戦前に中支派遣軍はなくなっているので、これもおかしい。そこで司令官と参謀に紹介されたのは、先にスパイとして派遣されていた原田中尉。原田中尉は潜入作戦大失敗の責任を取らされて、軍を除籍されてスパイにされ、カネだけもらって何もしないグータラになっちゃってたのだ。

この先はさらにおかしなことだらけで、有坂中尉は任務そっちのけで、飲み屋のおねえさん(岩崎加根子)を助けて、わりない仲になってしまう。任務はどうなっちゃったの?しかも、岩崎加根子は、ゲリラ(これも戦争中なら、匪賊と言ってるはず)の仲間だった。

有坂少尉はゲリラに武器を売って仲間に入れてもらう作戦を考えだすが、作戦は大失敗、援護に送られた部隊は全滅し、有坂と原田だけ命を助けられる。これで、有坂は、作戦の情報が原田からゲリラに筒抜けだったことを知る。原田は消えてしまい、有坂は責任を取らされて監獄入り。

その後釈放された有坂は、また中支派遣軍に呼ばれ、「ゲリラのアジトを押さえたから、討伐の任務に参加しろ」と命令される。この情報を流したのは原田。原田は、カネ次第で、日本にもゲリラにもどっちにも情報を流す奴だったのだ。原田を射殺して、ゲリラの親玉を説得しに行く有坂。この親玉は、岩崎加根子の兄だった。結局、説得が終わらないうちに、日本軍が攻撃してきて、ゲリラは全滅、有坂だけ助かった。岩崎加根子は、有坂との間に子供をつくっていたが、これが助かっていたのでした。

最後は、娘(山本陽子)が有坂に「お父さん!」と呼びかけておわり。あんたは中国で育てられたんじゃなかったの?

もうすべてがおかしい。しかしいちばん驚いたのは、これは大映作品「陸軍中野学校」シリーズのパクリではないということ。「陸軍中野学校」は1966年、こっちは1964年の作品。こっちの方が古いのだ。大映は、これがあまりにもヒドイので、リアル路線でちゃんとした作品をつくりましたというおはなし。日活の戦争映画はほんとうにろくでもない。