官房長官

星浩官房長官 側近の政治学』、朝日新聞出版、2014


著者はベテラン政治記者だから、官房長官の仕事がどういうものなのかについて、ひと通りのことがわかるかと思ったが…、あんまりわからない。

歴代官房長官のエピソードは、いろいろ載っている。しかし、肝心な官房長官の仕事については、1.記者会見、2.省庁間調整、3.与党内調整、という3つの項目が示されているだけで、特に省庁間調整と、与党内調整において、官房長官が具体的に何をしているのかということがわからない。

記者会見は、政府中枢の要人が毎日2回、政府全体の代表者としてやっていることなのだから、それなりに重要な仕事だと思うが、この会見のために各省庁が作成する「想定問答」が、情報を集約したものなので大切ということ、またこの想定問答の評価が官僚人事にも影響することでさらに大切ということはわかった。

それ以外に興味深かったのは、「内閣機密費」の問題。内閣機密費の使用が、官房長官の専権事項だということ、外交機密費の一部が官房に「上納」されていること、内閣機密費の中からあらかじめ内閣情報調査室の分(1年で2億円ほど)が差し引かれ、官房長官が使用できるのは毎月1億円くらいだということ、国会対策やマスコミ対策にも機密費が使われているということ、くらいはわかった。しかしわかるのはそこまで。

後は、巻末についている、安倍内閣の現職の官房長官菅義偉へのインタビューはそれなりにおもしろかった。しかし、現職の官房長官は、記者には話せないことが多いはず。せっかくなら、過去の官房長官経験者、それも政界を引退した人のほうがおもしろいことを聞けるのではないか?

薄い本(200ページ)なので、簡単に読める。一番いいところはそれくらい。