愛の渦

「愛の渦」、池松壮亮門脇麦ほか出演、三浦大輔監督、「映画 愛の渦製作委員会」、2014


これは傑作。脚本の評価が高いのは知っていたが(岸田國士戯曲賞)、読んでいたわけではなかったので、どうしても見なければいけない作品とは思っていなかった。しかし、見てみると、日本映画の歴史に残る傑作だ。

テーマはずばり、「セックス」。六本木近辺の某所で行われる秘密乱交パーティーが舞台。主人公のニート池松壮亮)を含めて、男4人、女4人がマンションの一室に集まり、午前0時から午前5時までの5時間の乱交が行われる。参加費は、男は2万円、女は1000円。

男にとっては手っ取り早くやりたいわけだが、女もやりたくて来ていることは同じ。最初は誰が先にセックスに持ち込むか、お互いに探りあいをしているが、1ラウンド、2ラウンド、3ラウンドとセックスの回数が進むうちに、親密さができてくる。しかし、その親密さは、仲良くするということだけではなく、セックスの相手の取り合い、そのためにライバルを攻撃したり、気に食わない者を蹴りだしたりするという社会的関係ができてくるということになる。

この微妙なかけひきと人間関係の描写が非常に緻密。主演の2人だけではなく、滝藤賢一新井浩文、駒木根隆介、中村映里子三津谷葉子、赤澤セリの8人全員のキャラが立っており、絡み方の描写が(セックスシーンを含めて)すばらしい。登場人物はこの8人に、店長、店員、途中参加するカップルを入れた12人しかいないのだが、120分あまりの上映時間で、緊張感が緩んでいるところがまったくない。

セックスはアダルトビデオと同じレベルで力が入っているが、池松壮亮門脇麦の間で、1度だけ、キスを伴うセックスがあり、この場面が突き抜けている。セックスが快感を飛び越えている瞬間を写しとっている。

終わりのところで、参加者が後で連絡を取れないようにする店側の措置と、それを乗り越えていく参加者のパワーが落ちになっていて、この場面には脱帽。いい意味で裏切られて、非常に気持ちよかった。

舞台演劇の脚本を鮮やかに映画に加工した、三浦大輔の手腕は恐るべきもの。これには映画として大きな評価が来るだろう。