文部科学省

寺脇研文部科学省 「三流官庁」の知られざる素顔』、中公新書ラクレ、2013


寺脇研が、古巣の文科省の実態について書いた本。タイトルから、「暴露本」と即断してしまうと間違いで、確かに内部のことは細かく書いているが、基本的には古巣に対して非常に好意的な立場から書かれている。著者は、「ゆとり教育」でかなり政治家やマスコミから袋叩きにされていた時期もあったが、追い出されたわけではなく他に働けるところがあったから早期退職しただけなので、古巣への恨みなどはまったくないらしい。

「三流官庁」というのは、著者がそのように思っているということではなく、霞ヶ関の世界では一般的にそう思われているということ。財務省や旧内務省系が上で文部、防衛、環境などが下という序列になっている。

文科省の内と外について、非常によくまとまった本で、日教組や臨教審との関係、国立大学、教育委員会との関係、大臣や文教族との関係、および「マルブン一家」といわれる文部省の「家風」、キャリアとノンキャリア天下り科学技術庁との合併、教育改革への姿勢まで、重要なことはひととおり書かれている。

著者の人柄も貢献しているのか、批判めいた記述が少ないのに、古巣を擁護するために筆を曲げているという印象は受けない。役所のやっている仕事を誠実に記述しているという印象。もっとも、ドロドロした部分がないはずがないだろうとは思うが、それに触れなくても、ここまでのことが書ければ、役所のおよその実態はわかる。

「一流」の方の財務省経産省については、いろいろな本が書かれているが、文科省について網羅的に、しかも内部にいた人でないとわからないことをおさえた上で書かれた本はなかったように思う。中央官庁の一面を知るために、非常に有用な本。