零戦燃ゆ

零戦燃ゆ」、堤大二郎、橋爪順、加山雄三ほか出演、舛田利雄監督、東宝1984


零戦と飛行兵」の映画。零戦の開発から太平洋戦争の戦績のストーリーが縦糸で、海軍に一番下の四等兵の階級で入隊する堤大二郎パイロット)と橋爪淳(整備兵)の青春物語が横糸。基本的に、この二人(と、その二人の間で青春している早見優)の若い軍人に焦点があたっているのと、上官で、試作段階の零戦にのって事故死するパイロット(加山雄三)、三菱の堀越技師(北大路欣也)、海軍の開発担当者(森次晃嗣)らが主要な登場人物で、零戦は確かに映画の主役になっている。

特撮は川北紘一なので、零戦の出てくる場面はちゃんと撮影されている。さらに、1/1の模型が作られていてちゃんとプロペラが回る。遠景でたくさんの機体が出てくる場面は当然合成だが、このペラが回る零戦の描き込みが非常に丁寧。試作段階の塗装前のものもある。脚本は笠原和夫なので、細かい描写はきちんとしている。開発関係の主要エピソードもきちんと盛り込まれている。

終わりでは、戦争末期、敵の空襲間近で基地要員が退避しようとするところを、一人だけ離陸した堤大二郎が蜂の巣にされて戦死。司令官の宇垣纏(加藤武)が母親に直接感状を授与。まもなく終戦。プロペラを外される零戦を見て、橋爪淳が「わたしが自分の手で処分してやりたいんです」と上申し、1機だけエンジンをかけて、アイドリング状態にしたところを燃料バルブを開けて、機関銃(大砲みたいな二十ミリ機銃)で火をつける。プロペラが回りながら、火が着いて燃え出す零戦に、基地要員が敬礼。石原裕次郎の歌がかぶって、クレジットが出てくる。

この場面は相当ウルッと来る。他の戦後制作の戦争映画と比べると、ひと味違ったテイストだが、これはアリ。脚本笠原和夫とはいえ、1980年代の戦争映画はもう娯楽映画として定着していたのだ。この頃は大作戦争映画がまだたくさんあったから、ちゃんと需要はあったということ。